うつ病
うつ病になる人は、人口の3~5%といわれています。したがって、決してめずらしい病気ではありません。
なかでも多いのは、軽症のうつ病で、うつ症状が軽く身体症状が強いために、患者さんは一般の内科等を訪れることになります。
しかし、そこでいろいろな検査をして「異常なし」ですまされてしまうことが多いので、うつ病が見逃されてしまうことが少なくありません。
うつ病の症状
1)うつ気分
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うつ気分は、誰でも愛する者と別れたり、大切なものを失ったりした時には感じるものですが、原因がはっきりしないのに深いうつに陥ってなかなか抜けだせないことがあります。
2)意欲・行動の障害
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何をするにもおっくう、意欲の低下、集中力の低下、決断力の低下、性欲の低下、行動の遅滞など生命エネルギーの減退による意欲・行動の障害が現れます。
3)思考障害
考えが進まない、まとまらないなどの思考の抑制や自分、社会、将来に対しての悲観的な考え方が多くなります。
4)身体症状
よくみられる症状として、からだがだるい、食欲低下、不眠、頭痛、肩こり、めまい感、性欲減退、聴覚過敏(耳鳴り)、口が渇く、胸が圧迫される、吐きけ、腹痛、便秘と下痢をくり返す、腰痛、手足のしびれなどが現れます。
5)日内変動、季節変動
うつ病では、しばしば朝方調子が悪く、夕方には元気がでてくるという日内変動を示すことがあります。また、うつ病には周期性変動のあることが知られており、1年~数年の周期で反復したり、季節的に春と秋に悪くなるケースが多いとされています。また、明らかな「躁」と「うつ」の周期を繰り返すものは「躁うつ病」と呼ばれています。
うつ病の治療
うつ病は心身の疲労状態ですから、休養をとることが大切です。仕事のペースを落としたり、しばらく休暇をとったり、場合によっては入院したりすることも必要です。
また、人には、現実的に避けられないストレス状況があります。一人で悩んでいては解決つかない問題も医師や心理士に相談することで考えが整理され、安心できることも多いものです。
うつ病の治療は、抗うつ薬を中心とした薬物療法が主体です。
従来のうつ病の治療は、三環系抗うつ薬が主流でしたが、副作用(口渇、便秘、排尿障害など)や遅効性(抗うつ効果がでるまでに2~4週間かかる)の問題がありました。最近では、副作用の少ない抗うつ薬の開発が進められ、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)が登場しました。
これらの薬は、抗うつ作用が強く、副作用が少なく、速効性があります。
また、効果の発現は比較的遅いですが、漢方薬を選択される方も多いようです。漢方薬は長期投与に向いており、一般的に副作用が少なく、体全体に作用します。ゆっくり体質を改善したい方には適しています。